◆東近江・東近江市◆
東近江市は、旧能登川町と旧蒲生町の間で編入合併が成立し、平成十八年一月一日に「新・東近江市」として再スタートします。総面積は、鈴鹿から琵琶湖までの約三百八十三平方キロメートル(県の約一割)で、高島市・甲賀市に次いで県内三番目の大きな市となり、人口(約十一万七千人)も大津市・草津市に次いで県内三位となります。
しかし、面積の約六割が山林や田畑で占められているのが現状です。自然を生かすことも大切ですが、市民ニーズにマッチした生活の充実も求められています。そこで、中村功一・東近江市長と滋賀文化短期大学の学生二人とのフリートークを通して、東近江市まちづくりの将来を探ってみたいと思います。コーディネーターを谷口浩志・滋賀文化短期大学(生活文化学科)助教授に務めていただきました。
プロフィール(敬称略)
中村 功一(なかむら こういち)
昭和7年3月、東近江市市辺町生まれ。神愛高校(現・八日市高校)卒。県農林部長、政策監を経て八日市市助役に就任。平成6年、八日市市長に初当選。17年2月から東近江市の初代市長。
谷口 浩志(たにぐち ひろし)
昭和31年2月、高島市マキノ町生まれ。愛知工業大学建築学科卒。平成13年から滋賀文化短期大学生活文化学科助教授(建築・住環境計画担当)。NPO法人ひとまち政策研究所理事。住民主導の地域開発や水環境と暮らしのかかわりに取り組む。主な著書・地域に生きる環境文化「風に出会う」(サンライズ出版)、市民活動・ネットワーク論と実践「我らネットワーク元気人」(同)など。【東近江市とのかかわり】新市まちづくり計画策定委員会座長、八日市南小学校校区編成審議会会長、まちづくりリーダー養成講座コーディネーター、八日市本町商店街活性化研究会顧問。
日野 晶厳(ひの あきよし)
昭和62年3月、吹田市生まれ。大津清陵高校卒。滋賀文化短期大学生活文化学科1回生。趣味・音楽を聴くこと。
山田 詩織(やまだ しおり)
昭和62年3月、吹田市生まれ。大津清陵高校卒。滋賀文化短期大学生活文化学科1回生。趣味・音楽を聴くこと。
大地・共生
▲中村 功一市長
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谷口 新・東近江市が誕生しましたが――
中村 面積は、三百八十平方キロメートルと、名古屋市より広い。そのうち六割が自然じゃないですか。ここに十一万七千人の市民が生活している。無限に広がる大地と、世代を越えた人間が共に生きていくという「大地・共生」が、初代市長として、永遠のテーマだと思っております。
谷口 素晴らしいテーマですが、その推進策はいかがでしょうか――
中村 東近江市の環境基本条例の制定でしょう。山とか、田んぼとか、市街地とか、そこに人が暮らす。大地に生き、生かされているとの認識が大切ではないでしょうか。条例の中に、何とか「共生」を盛り込みたい。
日本横断運河
谷口 鈴鹿から琵琶湖まで大きなまちになるわけですが――
中村 太平洋と日本海を結ぶ交通の要衝になるんじゃないですか。こんな話があるんです。昔、若狭から琵琶湖、愛知川を上って三重県に通じる「日本横断運河」という構想が浮上し、国へ陳情に出向いたことを思い出します。鈴鹿トンネルの開通で、運河が道路に替わっただけで、交通の要衝に違いありません。
美しく元気なまち
谷口 自然との共生、それ以外に目指しておられるものは――
中村 やはり「美しい元気なまち東近江市」でしょう。自然も美しい、琵琶湖も美しい、そこに住んでる若者とか、お年寄りとか、みんなが助け合って生きている姿が美しい。そういった優しい意味を含め、美しい東近江市でありたい。福祉、環境、学校教育など、あらゆる分野で美しいまちづくりが大切ではないでしょうか。
合併後の悩み
▲谷口 浩志助教授
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谷口 合併されて、将来の方向性を決める初代市長の責任は重大だと思います。一番に解決すべきことは――
中村 やはり、一つのまちとの認識、意識が持てるよう、市民一体感の醸成が急務だと感じております。合併によって旧市町の意識の違いがたくさん見受けられ、これを何とかを早く取り除き解消したい。
谷口 それには五年、十年かかりますよね。
このまちが好き
谷口 学生も交えてフリートークにしましょう。ここに住んでいて、どんなまちになってほしい?――
日野 今のままが良い。あえて変える必要もない。いっぱい遊ぶところも有るし、アルバイトも事欠かない。都会みたいにゴミゴミしていないし、都会ポイところもある。
山田 まつりが多い。盆おどりとか、大凧まつりとか。みんなが集まって、まちの中で市民が楽しめる、にぎわいのあるところが好き。まちの自慢にもなるし。
谷口 これは、市長がおっしゃった「共生」に通じると思いますが――
中村 昔は、お寺や神社を中心として、みんなの集まる機会が多くありました。その行事などがさびれていく中で、安らぎとにぎわいが感じられる東近江市にしたい。子供の教育にとっては、自然との共生を学ぶ里山がポイントになるのでは。
里山保全条例
谷口 君たちの年代には興味のない分野かも知れないが、里山は自然と人をつなぐ共有スペースであることを学んでほしい――
中村 里山は、遊びの場所でもあるし、自然を学ぶ場所でもある。ガキ大将がいて教えてくれた。そこには大人が山仕事をしていて危険な場所でなかった。今の子供は、山の手入れをゴミ拾い、清掃と勘違いし、山に仕事があるとは思っていない。もっと人が自然に近づけるように、環境条例に付随して、里山保全条例にも取り組みたい。
谷口 里山があって人間の生活は続いてきた。いろんなものが簡単に手に入り、自然と人間が分離してしまっている。長い歴史が育んできた自然と向き合うことが子供、若い人たちに必要でしょう。小さい時から進める教育の意味から、里山条例に期待します。
合併の感覚
谷口 合併して大きなまちになったが、何か変わった?――
山田 合併した意識はない。生活も変わらないし、暮しの中では、あまり影響がない。しかし、八日市という名前に愛着を感じる。
日野 合併が嫌というのでなくて、ただ単に、育った八日市が好き。この意識は持ち続けたいが、東近江市になって仲間が増えた気もする。
中村 中心部に八日市の名前が残っている。高校やインターチェンジ、駅にも残っているし、まったく消えたわけではない。
楽しみは買い物
中村 滋賀文化短大ができたら、もっと学生さんで八日市駅前がにぎわうと思っていたが、期待外れだった。若者にとって駅前は魅力がないんでしょうか――
山田 まち遊びは買い物が中心になるのですが、ウインドウ・ショッピングの時は都会に出かける。
▲日野 晶厳さん
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日野 電車に乗って行くのも楽しみの一つ。遊びに行くという気分的なものも手伝っていますが。
谷口 八日市本町商店街の活性化にもかかわっていますが、もっと若者の声が反映できるといいですね。
失われた地域力
谷口 地域が持っている力が薄れているように思われますが、これを取り戻す手だてとして、新しく十四地区で「まちづくり協議会」が立ち上げられますが、何か、うまく活用できないものでしょうか――
中村 協議会も年齢層が高いように思われます。それこそ共生じゃないんですが、ここにいる若い人たちにも参加してもらいたい。合併したといっても、先ほどの話のように、言葉では分かっていても実感がないのが現状です。お年寄りや若者、子供が一緒になって地域を守り、物事を進めて行くことが地域力につながるのではないでしょうか。
家庭の重要性
谷口 また、家庭の中から共生を実践していける状況が創れればいいんですが――
中村 家庭は社会生活、共同生活の原点です。一緒に食事しながら話し合ったり、家族との情報交換の場を取り戻さなければ。
山田 食事しながら学校での出来事をよく話します。
日野 すれ違いが多く、食事も話もする機会が少ない。
谷口 君たちから積極的に話しかける努力も必要じゃないかな。親は子どもから話しかけてくれるのをずっと待ってると思うけど。
▲山田 詩織さん
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地域とのかかわり
谷口 若い年代から地域にかかわっていくことが大事だということを理解してほしい。君たち「一斉清掃」って知っている――
日野・山田 知らない。
中村 おうちの人がしているからでしょう。しかし、表現する場が無いだけで、助け合う優しい気持ちは持ち合わせているようです。
谷口 学校では、文化祭や体育祭にしても準備から後始末まで真剣に取り組んでいる。一斉清掃じゃないが、地域に溶け込めば、それなりの力を発揮してくれるだろう。
市長への願い事
谷口 市長さんに何かお願いしたいことはありますか――
日野 小さい時から楽しみにしていた延命山の花火がなくなって寂しく残念です。
山田 もう少し街灯を明るくしてほしい。エネルギーにも関係しますが、身の危険を感じる時もあります。
中村 いずれも安心・安全につながる問題です。山中での花火は火災の面から危ないとの声が多く、だから場所を変えて行うしかない。一方、街灯は、地域で防犯灯と言うくらいですから要望が強く、すぐにとはいきませんが、明るい街にしたい。
ケーブルテレビ
谷口 地域の情報ネットワークづくりにケーブルテレビの準備が進められています。インターネットも使えるし、非常に身近で便利なものとして期待がかかりますが――
中村 東近江市の中で、ケーブルテレビによって市民みんなが同じ情報を持ち合える。まちや地域の出来事を伝え、情報を共有することは、仲良く生活する上で素晴らしいことだと思っております。君たちの大学ともネットワークを組んで、教育現場を各家庭に届けることも可能です。
市長から学生へ
谷口 最後になりましたが、市長から学生に期待することがあれば――
市長 大きくなった東近江市を自分の目で見て知ってほしい。見ておくだけでも大きな財産になると思うし、そこから、いろいろな発想が生れる。見て感じたことを素直に表現できることが、君たち若い年代の特権でもある。ぜひとも感じたことを率直に注文して下さい。東近江市には皆さんの若い力が必要です。谷口先生、学生の皆さん、よろしくお願いします。
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