▲再審請求棄却の決定に落胆と怒りをあらわにした支援者ら(大津地裁前で)
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◆東近江・日野町◆
またも裏切られた―。広島県の尾道刑務支所で服役中の阪原弘受刑者(70)が裁判のやり直しを求めていた日野町事件で、大津地方裁判所(長井秀典裁判長)は二十七日、「無罪を言い渡すべき合理的な疑いが明らかに存在するとはいえない」として再審請求を棄却した。午前九時半、大津地裁前に集まった支援者約百五十人は、決定書を受け取り出てきた弁護士の「請求棄却」との文字に、涙を流しながら失望と落胆、さらに怒りをあらわにした。
◆自白と遺体の矛盾
昭和五十九年に日野町豊田で、酒類販売店主・池元はつさん(当時69)を飲み代ほしさに殺害し、金庫などから現金を奪ったとして、事件発生から約三年後に強盗殺人罪で逮捕され、無期懲役刑が確定した阪原受刑者は、公判で一貫して自白は警察からの暴行・脅迫により強要されたとして無罪を訴え続けたが最高裁でも有罪判決が覆ることはなく、平成十三年十一月に大津地裁へ再審請求を行った。
四年間にわたる再審請求審で、最大の争点だったのが“殺害方法”。弁護団・裁判所が選定した両鑑定人ともに、自白調書による殺害方法と法医学の観点から遺体に残る損傷などを調べ直した鑑定結果が整合しない考えを示していた。
長井裁判長は、自白に秘密の暴露(犯人のみぞ知る事実)が含まれていないが「全体として具体的かつ詳細であり、概ね一貫している」と評価した上で、自白による殺害方法では被害者の意識を失わせることや舌骨・右顔面の損傷などが説明し難く「この部分については(自白と)客観的事実との矛盾がある」ことを認めた。
しかし、殺害時の体勢や手の動きなど「鮮明な記憶が残らなくても不自然ではなく、本件から三年以上も経過した後の自白であることなども考慮すると記憶違いとして理解することができる」として、のど・首を絞め、殺害したとの自白は信用できると結論付けた。
▲記者会見で「極めて不当な決定」と批判する弁護団や家族ら(滋賀弁護士会館で)
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◆結論ありきの決定
また、二千万円以上の貯金がありながら殺害したという動機を「短絡的ではあるが著しく不自然であるとはいえない」とし、遺体手首のひもの結束方法や金庫の内容物の未発見、形成困難な金庫の傷、金庫以外の被害品が不明のままであることなどの疑問を指摘しながらも「自白の核心部分の信用性を揺るがすものではない」と判断。
金庫の位置も「自白によれば店舗六畳間にあったという金庫について、普段は北側十畳間の押入に保管されていたものと思われるが、被害者が当日これをたまたま持ち出してきていた可能性は否定できない」とし、アリバイ証言や物色行為の有無に関しても弁護団の主張をことごとく退けた。
この決定に対して、石川元也弁護団長は「自白と客観的事実の食い違いを認めた上で、裁判官の頭の中の可能性や推測で事実に背いた誤った判断をした。新旧証拠を総合的に評価した形跡もなく、結論ありきの決定で極めて不当なもの」と批判し、玉木昌美主任弁護人も「自白の内容が、殺害方法などあらゆる点で崩れているにもかかわらず、(その事実を)見ようともせず検討もしない裁判所は許し難く、憤りと怒りを覚える。無実の阪原さんを救うまで戦う」と語気を強めた。
平成十四年から支援している日本弁護士連合会(梶谷剛会長)も「殺害方法は自白のまさに根幹部分で、ここに客観的事実との矛盾が出た以上、『疑わしきは被告人の利益に』との刑事裁判の鉄則に従うべきであった。今後も再審開始に向けてあらゆる努力を惜しまない」との声明を発表した。
◆最後までがんばる
十八年間父の帰りを待つ家族。長男の弘次さんは「これほど悔しいことはなかった。今、この思いを何にぶつければいいのか。いつも家族の中心にいる父を『とうちゃん、お帰り』と言って抱き締めるまで、戦い続けていく」と語り、二女の則子さんも「裁判官に短期間でこんないい加減な決定しか下してもらえなかった。父を無罪にするためにこれ以上何を出せというのか。父を助けるため、変わらぬご支援を」と全国から駆け付けた支援者にくやし涙をぬぐいながら訴えた。
間質性肺炎を患う阪原受刑者は、面会した弁護士に「これだけやってもらって(無実が)明白になっているのに、まだひどいことを言うのか。体がいつまで続くかわからないが、最後までがんばりたい」との決意を伝えたという。
弁護団は三日以内(三十日まで)に大阪高裁へ即時抗告を行い、再審開始決定を勝ち取るための新たな戦いを始める。
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